6月議会・松沢ちづる議員の一般質問の発言です

第一登壇

介護保険制度がはじまって17年目を迎えています。家族介護から社会的介護へと発展的展開の意義はありましたが、安心の介護は実現したでしょうか。「介護心中」「介護殺人」は表面化している事件だけでも年間50件から70件、ほぼ毎週1件の頻度で起きています。家族が要介護状態になったために仕事を辞める「介護離職」は年間10万人、特養待機者は52万人。65歳以上・1号被保険者の介護保険料基準額は、この間でほぼ2倍に引き上がり、生活への負担を重くしています。また、介護事業所や施設では全産業の平均賃金より月10万円も低い賃金と重労働が改善されず、人手不足が常態化しています。さらに、今後少子高齢化が進む中、介護保険制度自体の維持が可能かという問題に直面しています。国は、社会保障の理念である憲法13条や25条でうたっている個人の尊厳・権利と公的責任を、「自助」「共助」「公助」という言葉で変質させてきました。2014年成立した医療介護総合確保推進法はその極みともいえると思います。公的負担を抑える目的で「川上から川下へ」、従来入院治療が必要とされてきた患者のケアは病院から在宅医療へ誘導しており、それによって地域には重症患者が増えるので、介護保険サービスは重度の人に「重点化、効率化」しよう、軽度者に対するサービスは市町村事業に移行したり、軽度者の「生活支援」と住宅改修・福祉用具は原則自己負担しようとする内容です。「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように」という多くの人が望ましいと考えるイメージだけを強調し、具体的には地域の自主性や主体性、自己責任を求めるばかりです。肝心の財政面では2015年6月閣議決定された「骨太の方針2015」で、社会保障の自然増を3年間で9000億円から15000億円も削減することを目安にしています。すでに特養の入所対象は要介護3以上に狭め、年金収入280万円以上の人は介護保険サービスの利用者負担を2倍に、また低所得者の補足給付も対象を狭め、自己負担、家族負担を重くしました。この一連の流れの中に、尼崎市が来年4月から実施しようとしている介護予防・日常生活支援総合事業があるわけです。これまで要支援者の訪問介護・通所介護は介護保険給付のサービスとして位置付けられていましたが、来年、介護保険給付から外され市町村が独自に行ってきた地域支援事業に移されます。しかし、市町村事業への移行は「要支援」だけにとどまりません。国はすでに「要介護1・2」についても検討を進めています。今年度末には結論を出し、来年度国会で法改定に突き進もうと考えています。

ここでお尋ねします。今、尼崎市が直面しているのは、超高齢者社会がやってくる、在宅医療の推進で地域に重症患者が増える、そうなっても持続可能な介護保険制度の運営を行うためにどうしていけばいいのかという問題だという認識でいいでしょうか。

介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業と略します。)には上限額が決められます。事業開始する前年の要支援者の訪問介護・通所介護・ケアプランの給付額と介護予防事業費の合計に75歳以上の高齢者人口ののびを掛け合わせて算出します。尼崎市の推計では早ければ2018年にも上限額をオーバーするようです。そのため市は①基準、サービス単価の緩和②介護予防効果を高める多様なサービス体制を構築し健康寿命を伸ばすこと③それを推し進めるためには行政・市民・事業者が協力し合うことが必要だとしています。具体的には訪問によるサービスでは、現行の専門職によるものの他に、18時間・3日程度の研修を受けた生活・介護支援サポーターが安い単価で生活支援を行うことや、地域のボランテイアによる支え合い活動を考えています。通所型サービスでは、現行にほぼ近いもの以外に、今年度新規事業として高齢者いきいきサロンを行うことにしています。

 果たしてこれで、高齢者が地域で住み続けられるまちづくりができるのでしょうか。市が2月に要支援者と介護事業所にアンケート調査を実施し、3月には事業者説明会を実施していますが、その結果にもふれながら第2登壇ではこの観点から1問1答形式で質問していきます。

第2登壇

市は総合事業に移行となっても、サービスを利用する際の入り口は「要介護認定調査」だと、これまで説明されています。国はこれさえも安上がりに済ませるために、基本チェックリストでも構わないとしています。市があえて入口を「要介護認定調査」に決められた理由は何ですか

医療面の押さえもして申請者の把握をすることは、ケアプランを立てていくうえで非常に重要です。一人ひとりの申請者に寄りそった対応でとても評価できます。

次に、総合事業に基準・サービス単価の引き下げを導入することが市民に及ぼす影響について、お聞きしていきます。まず、デイサービスの単価変更ですが、これは一定評価できるものです。現行介護予防の費用体系が月単位の定額、つまりセット料金なので、入浴は家でもできるけどデイサービスでも利用する、車の送迎がなくても通える人も送迎バスを利用するといった状況があります。市の案ではセット料金を一つ一つに分解しているので、必要なサービスを必要な回数選択でき、全て利用したら現行の報酬単価となり、事業所にとっても収入減にはなりません。アンケート結果で市民やデイサービス事業所から一定理解されたゆえんだと思います。問題の多くは訪問型の生活支援サービスにあると思います。掃除・買物・調理などのサービスは専門職でなくてもできるだろうという発想が前提にあると思います。

まず、担い手の問題です。市は元気な70代の方も多くなってきているので、この方たちにも担い手の一人となって頑張っていただきたいと考えていますが、そういう高齢者が巷にいるのかどうかです。全国統計で65歳以上の就労者が昨年度730万人、10年前の1.5倍に増えています。貯蓄が少なく年金だけでは暮らしていけないと生活のために働く65~69歳は51.9%、半分以上です。

尼崎市では65歳以上の就労状況はどうなっていますか

みなさん生活のために働けるうちは働いています。市はこうした方々にボランテイアとして地域の支え合いの活躍を期待しますが、今でも、地域社協で役員のなり手がいないと悲鳴が上がっています。地域の老人会も世話役を引き受ける人がいなくて、老人会そのものが減少しています。また、18時間・3日程度の生活・介護支援サポーター研修を受けた人に、掃除や調理、買い物などの生活支援を有償ボランテイアとしてやってもらうことも期待しています。有資格者でも介護現場は低賃金のために応募しても人が集まらない状況です。ましてや無資格となれば更に低い賃金なるでしょう。誰が手をあげますか。

市は、ボランテイアやサポーターの確保がどれくらい可能と考えていますか。

次に支援を受ける側の要支援者について伺います。アンケート結果によれば、生活・介護支援サポーターの支援について、一人暮らし・夫婦のみ・2世代世帯いずれでも「受けたくない」が「受けたい」を上回っています。男女別でも、前期高齢者・後期高齢者別でも同様の結果が出ています。ここには、現行のホームヘルパーによる安心のサービスが奪われる不安や、個人のプライバシーに他人が土足で入ってくることへの拒否感が表れていると思います。「地域の支え合い」と言う表現は響きよく耳に入ってきますが、実の所、つい最近まで同じ老人会で活動していたような間柄の人に仕事として支援してもらうことになり、支援される側の尊厳を傷つけることになるのではないでしょうか。アンケート結果について、この部分の市の見解を伺います。市は、現行サービスとサポーターによる基準緩和型サービスの振り分け基準を「要介護認定調査表」の結果に求めています。「寝たきり度」の指標では、「屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない」ランクAの状態ならば現行どおりホームヘルパーの支援対象にします。「認知度」の指標では、「日常生活に支障をきたすような症状・行動、意思疎通の困難さが家庭外で多少見られても、誰かが注意していれば自立できる」Ⅱaの状態ならば現行どおりホームヘルパーの支援対象にします。しかしそれ以外は、無資格のサポーターの支援で構わないという振り分けです。はたして妥当でしょうか。ノンフィクション作家で「高齢社会をよくする女性の会」副理事長、厚労省の社会保障審議会委員も務めた沖藤典子氏は、ホームヘルパーによる掃除、調理、人との関わりを「三種の神器」と呼んでおられます。住まいが清潔であることがどれだけ健康を守るか。ヘルパーのつくる食事は質素でも家庭の味。そしてヘルパーが外の風を運んでくれる。会話して気持ちがまぎれ精神的に活発になる。この3つをしっかり守る「生活援助の効果」が状態悪化を防ぐ砦だと話されています。専門的な観察眼も記録もない無資格者の生活支援では、介護の質の低下を招き介護状態の重度化が進んでしまうと警告されています。

市はこの指摘をどう受け止めますか。認定調査票の「寝たきり度」「認知度」の指標に関わらず、要支援者の生活支援は資格を持つヘルパーで現行どおりに実施すべきではないですか。

次に、介護事業所のアンケート結果からお聞きします。基準緩和型の総合事業への参入について、「参入する、前向きに検討する」が訪問介護事業所で生活支援型34%、身体型44%、通所介護事業所で23%ありました。そのほとんどが「損益は関係なし、支出の方が多くなるだろう、でも参入しないと(対象者が困る)」と応えています。対象者の生活実態を知っている専門家だからこその苦渋の選択ではないでしょうか。また、事業所の収支につては訪問介護で「赤字」36.1%「概ね均衡」44.4%、通所介護は「赤字」41.6%「概ね均衡」34.5%、いずれもたいへん厳しい運営状況になっています。これについては、大阪社会保障推進協議会が今年1月に行った大阪市内の事業者アンケート調査でも同様の結果が出ています。昨年4月の介護報酬マイナス改定の影響と思われます。職員確保では「一時的に不足、常に不足」が訪問介護事業所で89.9%、通所介護事業所で73.5%です。お手元にお配りしている資料、訪問介護事業所の職員募集広告をご覧ください。これはある社会福祉法人の事業所のものです。市内で介護保険制度が始まった当初から事業を行ってきた法人ですから、給与水準は「いわゆる尼崎平均」と言えると思います。そこでこの程度です。とても低賃金です。アンケートの自由筆記欄には、「最低賃金さえ払えない。この報酬で働けますか」「誇りをもってやっているヘルパーのやる気を削ぐ」「事業所存続は難しい」等々、戸惑いや怒りの声が集中しています。

市は持続可能な介護保険制度のためだと言ってサービス単価の引き下げを考えていますが、報酬を引き下げられる側の介護事業所は昨年4月の介護報酬マイナス改定と人材確保難にあえいでいます。全く現状無視ではないですか。

国はすでに要介護1・2についても要支援同様に介護保険給付から外して市町村の総合事業に移行させる計画を進めています。国が介護保険外しをしても、市は総合事業の中で介護サービス体制をつくらなければならず、その一番のパートナーが介護事業所です。そこを潰すような方法はとることは、いずれ介護の受け皿全体の不足を招くと危惧します。市はどう考えますか。

病院から在宅へ、地域包括ケアシステムをすすめる切り札として国が提示した夜間対応型訪問介護事業所は市内で「0」、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所は小田・武庫それぞれに1ヵ所、園田に2カ所しかありません。専門職の配置が24時間求められる割に収入が見込めず、今後も増設される見込みは少ないと言われています。やはり在宅介護の要となるのは訪問介護と通所介護、市が廃業に追い込むようなことをしてはいけないと強く指摘しておきます。1号被保険者の介護保険料がどんどん引き上げられていることも問題です。基準額で2000年スタート当初よりすでに2倍近くになっており、市の試算では2020年には7104円2.37倍となります。高齢者にとって重い負担です。介護保険の財政は、公費50%、保険料50%の配分になっており、65歳以上の1号被保険者が納める介護保険料が全体の22~23%程度を占めている構図です。そのため、介護保険サービスの量が増えれば、必然的に保険料が上がり、事業所の報酬単価を上げれば、それはそのまま介護保険料の引き上げに表れます。だからといって保険料を上げないためにサービスの抑制をすることは、介護を必要とする高齢者の命や生活の維持を脅かし、報酬単価を引き下げることは必要な介護の質を低下させます。国は国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設けました。国民は介護保険事業に要する費用を公平に負担することを担保に、要介護状態になっても必要なサービスを利用しながら日常生活を送ることができるはずでした。しかし、現実はどんどん変わってきています。憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とうたっています。憲法25条2項では「国は、すべての生活部門について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と書かれています。解決の道は、国の介護への財政負担をもっと多くすることに限ると思います。

この点について、市長の見解をもとめます。

これまでの質疑応答で明らかとなったのは、総合事業には上限額が設定され、その範囲内で事業を行うと、要支援者のケアに質の低下が生じかねない。介護事業所にさらなる減収をもたらし運営状況を悪化させ、介護の量も低下する危険性があるということです。2014年法改正が行われた際、参議院で次のような付帯決議がされています。「介護予防訪問介護及び介護予防通所介護の地域支援事業への移行に当たっては・・・・利用者のサービス選択の意思を十分に尊重するとともに、地域間においてサービスの質や内容に格差が生じないよう、市町村及び特別区に対し財源の確保を含めた必要な支援を行うこと」とあります。

市が今行うべきは、とりあえず基準緩和型は導入しないで、現行サービスを継続し介護の質と量を確保すること。国に対して、総合事業内で要支援者へのケアが従来どおりにできるよう財政措置を行うよう要請することではないでしょうか。

次に、地域支え合い活動、介護予防活動についてお聞きします。

市は、地域支え合い活動、介護予防活動について、それぞれどのような展開を考えていますか。

・高齢者いきいきサロン事業の展開、・いきいき100歳体操の自主的な活動、・市民団体による介護保険で対応できない生活上の支援活動。これらはまさに住民主体で行われるべきもので、これらの活動が地域で広がっていくことが、年をとっても元気に安心して住み続けられる「地域づくり」の一つになると思います。これらの活動は高齢者の方々の日常生活を豊かにするものですが、「何らかの介護が必要」と認定された方の生活支援を任される受け皿となり、地域が責任を持たされるようなものではありません。あくまで自主的、ご近所のお付き合い支え合いに留めるべきです。多大な責任転嫁は、せっかく支え合いの輪を広げようと考える市民の足を止めることになると思います。今、まさに介護保険が岐路に立たされていると思います。それは、最初にも述べましたが、「医療介護総合確保推進法」「骨太の方針2015」に表れているように、国が描く介護保険の姿は、重度者のみに重点化、効率化され、軽度者のケアは十分な財政措置もしないで市町村に移していくものです。しかしこれでは、市町村の介護力は低下し、介護保険法にうたわれている「要介護状態になっても・・・その人が尊厳を保持し、能力に応じ自立した日常生活を営むこと」は困難になります。今でも、高い保険料を払うのにいざサービスを利用しようと思ってもさまざまに適用条件があって必要な介護サービスが利用できない、サービスを利用しないのに保険料は自動引き落としされる、生活が厳しくて払えない等々、高齢者の生存権を脅かしています。市は市民に対して、住民の福祉の増進を図ることを基本として、行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担っています(地方自治法第4条)。国の社会保障削減政策を受動的に進めるのではなく、市民の立場から介護の質と量の維持・改善をしっかり目指していただきたいです。